2024.03.06

ワルファリンとビタミンK

寒さが急に戻ってきたので、また鍋が食べたくなりますね。
主役にはなりませんが栄養満点の白菜をたくさん食べることが出来る鍋は身体も温まり、今の時期にぴったりなお料理です。白菜にはビタミンCやビタミンB6などのビタミン類、カリウム・カルシウムなどのミネラルや食物繊維を多く含んでおり、ビタミンKも含まれます。ビタミンKは骨を強くして動脈硬化を防ぐ効果があると言われています。今日は一度ビタミンKと関連のあるワルファリンについて書きたいと思います。

一般に「血液をサラサラにするお薬」と表現される薬剤は、正しくは「抗血栓薬」と言います。また抗血栓薬は抗凝固薬、抗血小板薬、血栓溶解薬の3つに分かれます。実際にはサラサラにするのではなく血液が異常に固まりやすくなるのを防ぎます。
抗凝固薬のうちワルファリンと言う薬剤をご存知でしょうか?ワルファリンは商品名ワーファリンと言い、当院でも内服されている患者様も多い薬剤です。ワルファリンの歴史は古く、誕生のきっかけは1920年代に遡りますが今もワルファリンは数百万人に処方され、世界保健機関(WHO)の必須医薬品リストに示されています。ワルファリンは食事などに含まれるビタミンKの働きを抑える事で、身体に血栓が出来ないように調整する薬です。ただしビタミンKは一般的には身体に良いもので、それだけで血栓が出来るわけではありません。

ビタミンKの働きを抑えるワルファリンは、ビタミンKが含まれる食べ物との食べ合わせや他の薬剤との飲み合わせに敏感です。代表的なものは納豆、しそ、アロエ、青汁、生の白菜で、薬剤であれば抗生物質などです。またワルファリンは有効量に個人差があるため、内服量を決めてから2ー4週間後に「PT-INR」と言う血液検査を受けて頂き、ちゃんと効果が出ているか、それともワルファリンの量の増減が必要か定期的な血液検査をして調整する事が必須です。
特にワルファリンについてご質問が多い食事についてですが、ビタミンKは加熱する事で食材から減少しますので、加熱調理する鍋や温かいお料理であればワルファリンを内服されている患者様でも過剰に摂取しなければ、さほど気にすることはありません。ただ、納豆のように加熱をしない食材は1食でもビタミンKがかなり含まれるため注意が必要です。

そんなデメリットを解決するために2011 年より直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulants:DOAC)が利用可能になりました。DOACは国内では4種類あります。またワルファリンと違い食事との相互作用が小さく、飲みわせの悪い薬も少ない事やワルファリンほど頻回に血液検査をしなくても良いところがメリットです。デメリットとしては薬価のみでみるとワルファリンとくらべて高価になってきます。
先日も納豆を食べたいと患者様から相談を頂き、適切なDOACに切り替えてさせて頂き、患者様もとても満足されていました。
ただしワルファリンでしか治せない病気もありますので気になる方はお気軽にご相談ください。
参考文献

Lurie, Y. Warfarin and vitamin K intake in the era of phar- macogenetics. Br. J. Clin. Pharmacol., 70, 164–170

Yoko, S. A Systematic Review of the Acceptable Intake Level of Vitamin K among Warfarin Users, 2015

日本食品標準成分表(八訂) 増補2023年

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